蒼白の駅

2021年12月の末、留萌の寂しいビジネスホテルで、僕は焦っていた。受験を挟んでほぼ2年ぶりの一人旅は10泊11日の長期戦で、疲れないためにかなり行程に余裕を持たせた(始発を減らしたり何もしない日を作ったり)のはかなり賢明な策だと思った…のだが。 どうも…

アザレア行き夜行船

愛媛県松山から数十分。降り立った高浜という駅は郊外電車の終点で、なかなか風情のある佇まいだった。 しかし慌ただしく小さいバスに乗り換え、フェリーターミナルへ向かう。 手続きを済ませ、空港のような通路を歩くと見えてくる「松山 - 小倉」のプレート…

ずっと空を見ていた / 円環

ずっと空を見ていた 最初に僕の考え、というか単純な好みを述べたほうがいい。僕は冬が好きだ。 もちろん夏と比較して。夏についての愚痴なら僕はいくらでも絞り出すことができる。こう書いているうちにも、家に蚊がいるという事実は僕をすばらしい不快感で…

果ての旅路 Ⅳ

海を眺めていた。 船旅は退屈だ。 窓から見えるのは空と海、空は眺めていても変わらないし海は時折白い波を立てるだけ。 甲板に上がろうにも荷物を持って行くのは億劫だし、どうせ僕のことだから数分で疲れて帰ってくる。 船出の時に聴いた曲をもう一度聴き…

果ての旅路 Ⅲ

ここは本州の最北、青森県。 …そして朝5時半。 いつまで早起きを続けなければならないんだ…などと思うが、この行程を組んだのは他でもない自分だから何も言えない。 駅までの道を歩いていると右手に大きな三角形が現れる。たしかアスパムという名前の物産館…

果ての旅路 Ⅱ

朝5時、能代。 昨夜と変わらず誰もいない、この街が眠った後に着いて起き出す前に去ることになった。 人がいなくても列車はやってくる。 能代5時23分発、下り岩館行き始発列車。 案の定車内に乗客の姿はなく、自分一人を乗せて三両編成は能代を出発する。 川…

果ての旅路 Ⅰ

長崎のホテルでツイッターを流し見していると、あるツイートが目に留まった。 暮れ方、おそらく終点なのだろう雪の残るバス車庫の写真。 バス2台がようやく入るというスケールのその車庫には明かりのついたバスが止まっていて、ヘッドライトが雪と砂利でぐし…

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